2009年6月27日土曜日

ROCKET / G.RINA



僕はかつてロケットに乗ることを夢見ていた
輝く宇宙に向かって! 
大量の燃料を使って、友達や家族を見下ろして、
僕は夢をかなえる旅にでた
しばらくすると、燃料はすぐに燃え尽きた
そして僕のまわりには誰もいない
真っ暗な果てしない空洞の中
僕はこれといった答も見つけることができずに、孤独だった
憧れってこんなものだったっけ
僕は目を閉じて
川べりで君と夜空を見上げていた頃を想い出す
ようやく僕にとって、豪華なロケットは
必要でなくなったのかもしれない
いつか僕は最もまばゆいものを心のなかで見つけるだろう

Once I fancied myself riding on a rocket.
to the shining universe !
Using a lot of fuel, looking down on my friends and family,
I took a trip to fulfill my dream.
after a while, fuel burned out quickly
and nobody was around me.
Inside of a pitch-black endless hole.
I found no special answer and I was alone.
I couldn't recall what I was yearning.
I closed my eyes, and remembered the time
I looked up at the night sky with you on a riverbank.
I found out that a gorgeous rocket might be
unnecessary for me any longer.
Someday I will find the most dazzling thing inside my soul.





2009年6月26日金曜日

サーカスの娘 / G.RINA



空中ブランコの快楽 足下の世界を蹴っ飛ばす
だけど、この手を放して跳べばもう
生命ごと彼のもの 生命ごと彼のもの
その手を放さないで しっかり握ってね

いつぞ流した涙も 来たる何かを信じる為と
費やしてしまうのが美しい、
コインとして数えて コインとして数えて
惜しみなく使い果たせ 惜しみなく使い果たせ

明日死んでしまうかもしれないわ
それなら今日という日に賭けては
いけない命があるものかしら
そうよ、サーカスの娘

明日死んでしまうかもしれないわ
それでは今宵 此の場で踊れば
報われぬ、とつぶやく間もないわ
サーカスだけで見る夢

ナイフ使いの標的 愛しむべきそのしなる手首
縛られた体こそは正直
ええ、望むところよ ええ、望むところよ
怖れるものはないの 恥じるものもないの

いつぞ流した涙も 来たる誰かを信じる為と
費やしてしまうのが美しい、
コインとして数えて コインとして数えて
惜しみなく前へ進め 惜しみなく前へ進め

明日死んでしまうかもしれないわ
それなら今日という日に賭けては
いけない命があるものかしら
そうよ、サーカスの娘

明日死んでしまうかもしれないわ
それでは誰かの為に踊れば
救われる憧れもあるかしら
サーカスだけで見る夢

2009年6月24日水曜日

ジャンニ・ヴェルサーチ暗殺 / SPANK HAPPY



この退屈な国には もうお金がないわ
街が絶滅しそうね あなた最後の望みよジャンニ
ホスト通いの友達や ゲイのみなさんだけじゃなく
アタシも愛しているのよ 震えるほどの気品よジャン・ポール

昼の恋は 恋はあなたと
夜の愛も 愛も
裸になっても 心は
Je t'aime, je t'aime, ...
あなたを着てるの

この退屈な男は もうお金がないわ
優しいだけじゃダメだわ あなたを買いに行かなきゃカルヴァン
でもこの人が好きなの 悪いのはアタシだわ
アタシ生まれ変わったら 絶対貴族になるのクリスチャン
クリスチャン・D

20年前アタシ産まれた頃のお話をして ねぇダーリン
アタシあなたの話とっても大好き お金で虹が架かる空
夜の東京タワー2人でのぼり いつか見れるの?もう一度?
あのねどうして今は景気が悪いの?
資本主義はきっと 恋愛よりも難しいのね
それでもあたし あなたのキッスで結局
Je t'aime, je t'aime, ...
でもお金がないの

この最高な街には 今お金はないけど
あなたを愛する人々は こんなに沢山いるわジャンニ
あなたが撃たれたその日に ニュースであなたを見たけど
美し過ぎる瞳だわ あれじゃ殺されちゃうわねジャンニ
ご冥福を祈るけど 何も心配ないわ
あなたの気品と精神は アタシたちが受け継いでくわ
ずっとオシャレでいたいわ 我が命果てるまで
いまアタシが着てるのは ママから譲り受けたディオール
今夜は星が綺麗だわ 赤坂の夜はシンパシック
いつかアタシが死んだら 天国で会いましょうねジャンニ


2009年6月14日日曜日

花 / ASA-CHANG & 巡礼



花が咲いたよ
酷く風に怯えた
誰も見たことない花が咲いていたよ

花など無い
それはあるはずもないと思ってたら
そしたら 花が咲いたよ
誰も見たことない 見えるはずもない 咲くはずもない花が咲いてたし
そこにやはり そこに確かに そこにあるだろう

花が咲いたよ
酷く風に怯えた
誰も見たことない花が咲いていたよ

そしたら 酷く風に怯えた
誰も見たことないそれは
花は風に怯えて 風に震えて 花は揺らされて
怯えていたようだ

花が泣いたよ
酷く風に打たれた
光を見たことない花が泣いていたよ

さっきの風の音よりもっと嵐で
そしたら 花が泣いていたよ
夢などない もう風などない もう雲も動かねど
なのにそれなのに花は 闇に愛して 闇に歌い 闇に泣き
なのにそれなのに花は 闇に飾られて 選ばれて 愛されて
光を見たことない花は 選ばれ愛され 闇を愛していたようだ

花よ
花の不屈の心に光が笑ってくれるように
引かれぬように 揺らされぬように 流されぬように 生きられるように

花よ 月を見よ 星は駄目よ闇よ
月は本当の光よ
今 星も綺麗よ
月の光のようなものが
本当の星の光のような闇が 駄目よ闇は
月は本当の光よ

ならばそれならば
闇の波を押し返すのだ 闇の住みかを紐解くのだ

花に光を
それを願ったんだ

そしてそしたら
花は答えたんだ
一度だけ答えたんだ
「光は要らね 水を下さい」




2009年6月3日水曜日

官能小説家 / 高橋源一郎



夏子は眠りと覚醒の狭間をゆっくりと渡ろうとしていた。それから不意にたぎるような哀しみがやって来た。きりきりと痛むような、けれども定かではない記憶が、遥か下の方で蠢いていた。ああ。夏子は声にならぬ声をあげた。イヤ。夏子は叫ぼうとした。なにかが夏子を連れ去ろうとしていた。どうすれば人の声の聞こえない物の音のしない静かなところに行けるだろうつまらないくだらない面白くない情けない哀しい心細いこうやってあたしは生きてゆくのかこんなにも寂しいのに。その時、夏子の耳にか細い声の歌が聞こえた。渡るにゃ怖し渡らねば。それは夏子自身が歌う声だった。

そうだ。あたしは渡らなければならないのだ。そう決めたのだ。するだけのことはしよう。あたしはなんのために生まれてきたのか、なにができるのか、それを知りたい。そう思ったのだ。暖かいところでまどろみ、無心に生きることがどれほど心やすらぐことであっても、そこから身を離そう。苦しいのはあたしだけじゃない。そう思った。誰かがいってた。なんのためにと問うてはいけないのだ。

その時、凍えるような寒さが躯の芯からやって来た。またここに戻ってきてしまった。夏子はそう思った。そこはシーツの中ではなかった。水に濡れた冷たいタイルの床に座りこみ、それよりさらに冷たい便座を抱きかかえるようにして、夏子は少しずつ目を覚ましていった。頭は重く、何度も繰り返し吐いたせいで喉が痛かった。

書かなくちゃ。いま、夏子が考えることができるのはそれだけだった。ほんの少し書くことを覚えただけなのにもうこんなに苦しかった。苦しいよ、苦しいよ。夏子は、桃水に何度も訴えた。すると、桃水は、それは君が正しい道を進んでいる証拠なのだと答えるのだった。書くことは苦しい、書くことは異常だ、誰もなにも書かなくても生きていける、なのに君は書こうとしている、君は狂いかけている、だったらもっと狂うのだ、もっともっと狂ってついに書くことが苦痛でなくなるまで。