2014年8月29日金曜日
Des droits et devoirs du citoyen / Mably
2014年6月4日水曜日
Stato di eccezione / Giorgio Agamben
例外状態は、究極においては、アノミーとノモス、生と法、権威と権限とがどちらともつかない決定不能性の状態にある閾を設けることによって、法的―政治的な機械の二つの側面を分節すると同時にともに保持するための装置である。それは、アノミーがなおも法秩序との関係を保っており、そして規範を停止する権力が生を直接的に掌握しているというような、ひとつの本質的犠牲に基礎を置いている。二つの要素が相互に連関しあっていながらも、概念的には時間の点でも主体の点でも区別された状態にとどまっているかぎり、二つの要素のあいだの弁証法はそれでもなおなんらかの仕方で機能しうる。しかしながら、それが唯ひとりの人格のうちで合体しようとする傾向を見せるときには、そしてそれらがつながりあい、どちらともつかない決定不能状態に陥ってしまうような例外状態が規則に転化するときには、法的―政治的体系は死を招く機械に変貌してしまう。
2013年5月28日火曜日
Les Confessions / Jean Jacques Rousseau
わたしはぼんやりと木の幹に石を投げていた。いつもの腕前で、ということは、ほとんどひとつも当たらなかったという意味だが。この遊びの最中にふとわたしは、不安をしずめるためにこれで占ってみようと思いついた。そこでこう自分にいった。「この石を目の前のあの木に投げてみよう。当れば、救われる徴候だし、失敗すれば地獄に落ちる徴候だ」とうそぶきながら石を投げる。ひどく胸がどきどきし手がふるえていたが、運よく木のまんなかに命中した。いや、実はなんでもないことなのだった。すぐそばの非常に太い木をわざと選んだのだから。それ以来、わたしはもう自己の救いを信じて疑わなくなった。この時のことを思い出すと、自らを笑っていいのか悲しんでいいのか、わたしにはわからない。
2013年2月17日日曜日
Logique du sens / Gilles Deleuze
与えられた名 n1 は、n1 の意味を指示する n2 に対応し、n2 は n3 に対応する、というようになる。それぞれの名について、言語はこの名の意味に対応する名を含まなくてはならない。言語的実体のこの無限の増殖は、フレーゲのパラドックスとして知られている。しかし、これはまたルイス・キャロルのパラドックスでもある。それは、アリスが鏡の向こう側で騎士に出会うとき、明確に現われる。 騎士はこれから歌う歌のタイトルを告げる。「歌の名は鱈の目だ」「それが歌の名なの」とアリスは言う。騎士は答える――「お前にはわかってないな。名がそのように呼ばれているのだ。本当の名は、老人だ」「歌はそういう風に呼ばれているのと言えばよかったのかしら」とアリスは言い直した。「そうじゃない。それは別のことだ。歌は方法と手段と呼ばれている。しかし、それはただそう呼ばれているというだけのことだよ。わかるかな」「でも、そうすると、歌は何なの」。騎士は言う、「つまり、歌は本当は「柵に腰かけて」なのだ」。
2012年6月29日金曜日
A peine defiguree / Paul Eluard
悲しみよ さようなら
悲しみよ こんにちは
きみはいつも天井の溝の中にいるね
愛しい人の目の奥にもきみが見える
でもきみは悲惨とは少し違う
だってどん底にいる人間が笑ったときに
きみが見えるから
こんにちは 悲しみ
いとおしい身体から生まれる愛
その愛がもつ力
まるで実体のない幽霊のように
やさしさがにじみでているね
うなだれた頭
悲しくて美しいきみの顔
Adieu tristesse
Bonjour tristesse
Tu es inscrite dans les lignes du plafond
Tu es inscrite dans les yeux que j'aime
Tu n'es pas tout a fait la misere
Car les levres les plus pauvres te denoncent
Par un sourire
Bonjour tristesse
Amour des corps aimables
Puissance de l'amour
Dont l'amabilite surgit
Comme un monstre sans corps
Tete desappointee
Tristesse beau visage.
2012年4月7日土曜日
Endzeit und Zeitende / Gunter Anders
彼は古い粗衣を身に纏い、頭から灰をかぶった。これは、愛する子供か配偶者を亡くした者にしか許されていない行為だった。ここぞというときの衣装を身につけ、苦しみを演じながら、ノアは再び街に向かった。住民たちの好奇心、悪意、盲信を、上手く逆手にとって見せるぞと覚悟を決めていた。ほどなく、ノアのまわりには野次馬たちが群がってきて、口々に質問を浴びせ出した。誰か亡くなったのか、誰が亡くなったのか、と人々は尋ねた。ノアは、多くの人が亡くなった、しかも亡くなったのはあなたたちだと答え、聴衆はこれに大笑いした。「その破局はいつ起きたんだ?」と尋ねられると、ノアは「明日だ」と答えた。
人々がいよいよ注視し、狼狽すると、これに乗じてノアはもったいぶって立ち上がり、こう語った。「明後日には、洪水はすでに起きてしまった出来事になっているだろうがね、洪水がすでに起きてしまったときには、今あるすべてはまったく存在しなかったことになっているだろう。洪水が今あるすべてと、これからあっただろうすべてを流し去ってしまえば、もはや思い出すことすらかなわなくなる。なぜなら、もはや誰もいなくなってしまうだろうからだ。そうなれば、死者とそれらを悼む者の間にも、なんの違いもなくなってしまう。私があなたたちのもとに来たのは、その時間を逆転させるため、明日の死者を今のうちに悼むためだ。明後日になれば手遅れになってしまうからね」。こう言って彼は自宅に戻り、身につけていた衣服を脱ぎ、顔に塗っていた灰を落とし、自分の工房に入っていった。晩になると、一人の大工が扉をたたき、こう言った。「方舟の建造を手伝わせてください。あの話が間違いになるように」。さらに夜が更けてくると、今度は屋根職人がこう言って二人に加わった。「手伝わせてください。あの話が間違いになるように」。
2011年10月10日月曜日
Aguas de marco / Antonio Carlos Jobim
棒切れ、石、道のつきあたり
切り株に腰をおろして
ちょっとばかり淋しくて
硝子の欠片、生と太陽
夜、それは死
針と、糸
野原のペローパ樹、玉結びのある枝
優雅なカインガー、梨の木マチッタ
風の木、土手のとんぼがえり
底知れない謎、望もうが、望むまいが
追い風が、暖炉を吹き消し
桁から窓へ、梁のお祭り
雨が雨降り、流れるお喋り
三月の雨が、疲れを洗い流していく
足だ、地面だ、健脚のお通りだ
手には小鳥を、パチンコの小石で
鳥りが舞う、鳥が落ちる
小川が、泉が、パンの欠片に
井戸の深みで、道はおしまい
顔をしかめて、ちょっとばかり淋しくて
刺や釘や、南京玉やお伽話
魚の仕事が、銀色に光る
朝日と共に、レンガが運ばれ
薪がくべられ、蚊の攻撃はおしまい
カシャッサの瓶が、街道ばたで砕けてる
家の設計図、寝床で体を休め
ぬかるみの真ん中で故障した車
泥の中の一歩、橋だ、蛙だ、がま蛙だ
朝日に映る森
夏の終わりを告げる三月の雨
君の心に宿る、人生への誓い
棒切れにも似た蛇が、
ジョアンをジョセーを、
手のひらの刺、足の裏の傷
夏の終わりを告げる三月の雨
君の心に宿る、人生への誓い
棒切れ、
石、
道のつきあたり
切り株に腰をおろして
ちょっとばかり淋しくて
また一歩、橋だ、蛙だ、がま蛙だ
美しい地平、隔日熱
2011年9月17日土曜日
La Cigale et la Fourmi / La Fontaine
夏の間歌い続けた蝉は
自分が無一文であることに気づいた。
北風が吹いてきたというのに
蝿やミミズの
ひとかけらも残っていない。
蝉はひもじさで悲鳴をあげた。
隣に住む蟻のところへ行って
季節が変わるときまで
食いつなぐための
少しの穀物を貸してほしいと頼んだ。
「動物の名誉に誓って、収穫の時期までに
元金と利子をそろえて払うから」と。
蟻は気前が良いわけではない。
それは蟻の欠点のうちで、もっとも小さなものであるが。
「暑い間おまえさんは何をしてたんだね?」と
蟻はこの借り手にたずねた。
「夜も昼も歌ってました。
あなたのお気には召さないでしょうが・・・」
「歌ってたって? それはまた結構なことだ。
それじゃ今度は、踊りたまえ!」
La Cigale, ayant chanté
Tout l'été,
Se trouva fort dépourvue
Quand la bise fut venue :
Pas un seul petit morceau
De mouche ou de vermisseau.
Elle alla crier famine
Chez la Fourmi sa voisine,
La priant de lui prêter
Quelque grain pour subsister
Jusqu'à la saison nouvelle.
"Je vous paierai, lui dit-elle,
Avant l'Oût, foi d'animal,
Intérêt et principal. "
La Fourmi n'est pas prêteuse :
C'est là son moindre défaut.
Que faisiez-vous au temps chaud ?
Dit-elle à cette emprunteuse.
Nuit et jour à tout venant Je chantais, ne vous déplaise.
Vous chantiez ? j'en suis fort aise. Eh bien! dansez maintenant.
2011年1月4日火曜日
00:00:00 / 口ロロ
一秒 ふたりその時運命感じて 繋がって
一分 原稿用紙一枚分の話 繋がって
一時間 予感が徐々に確信に 繋がって
一日 言葉じゃ足りないから唇 繋がって
一週間 体と体 文字通り 繋がって
一ヶ月 分の給料の指輪と誓い 繋がって
一年 恋から愛の結晶生まれ 繋がって
一世紀 僕も君も もういない それでも 繋がって
2010年7月16日金曜日
Generation X / Douglas Coupland
「1974年のこと。オンタリオ州キングストン」
煙草に火をつけるので、ぼくらが待っていると、
「父さんとぼくはガス・ステーションにいて、ぼくはガス・タンクを満タンにする仕事を与えられていたーーギャラクシイ500っていう洒落た車だ。だから、満タンにすることは、ぼくにとって大きな責任だった。
ぼくは、良くありがちなヘマな子で、しょっちゅう風邪をひいてばかりいて、ガス・タンクを満タンにするとか、もつれた釣り糸をほどくとかのコツが呑みこめなかった。
必ずどこかでドジを踏んでしまうか、物を壊してしまうか、死なせてしまうか。
ともあれ、父さんはステーションに店にはいって地図を買っていて、ぼくは外にいて、とっても男らしい気分で、まだ何もしくじっていないことがーーーガス・ステーションに火をつけてしまうとか、そういったことをしてないことがーーーとっても誇らしかったし、タンクがそろそろ一杯になりかけてた。
さて、父さんが出てきたとき、ちょうどタンクの口まで一杯になってたんだけど、そこまできて、ノズルが妙におかしくなった。
そこいらじゅうに、撒き散らしはじめたんだ。なぜかはわからないーーーただ、そうなってーーージーンズにも、ランニング・シューズにも、ナンバー・プレートにも、セメントにもかかってーーー紫色のアルコールみたいだった。
父さんが全部見ていたし、こいつは小言をくらうな、と思ったもんさ。とてもチビになった気分だった。
でも、父さんは小言の代わりにニッコリして、こう言った。
『なあ、お前。ガソリンの匂いって、いいだろう。眼を閉じて、吸い込んでみろ。とっても清潔だ。未来みたいな匂いがする』
だから、言われたとおりにしてみたーーー言われたように眼を閉じて、深々と息を吸った。
そしたら、その瞬間、瞼ごしに太陽の鮮やかなオレンジ色の光が見えて、ガソリンの匂いがして、膝がガクガクした。
でも、それがぼくの人生でいちばん完璧な瞬間だし、訊かれるなら(ここのところに、かなり期待をかけているんだけど)、天国というのは、あの何秒かとすごく似ているはずなんだ。それがぼくの地球の記憶だね」
「有鉛だった、無鉛だった……」とトビアスが訊く。
「有鉛」とダグが答える。
「完璧」
2010年7月13日火曜日
2009年12月25日金曜日
フロイドと夜桜 / 菊地成孔
夢から覚めても夢の
夢の中でまた夢の
夢ばかり見てる夢の中
さまようアタシは今日も
コワい夢やアマい夢を見たの
恋に破れても恋を
恋に醒めてても恋を
恋ばかりしてるその中で
恋するバカなアタシは
ワルい人がワルい人が好きなの
憂鬱だわ こんなにも悲しいわ
あんなにも上手く行ってた筈なのに
こんなのは地獄だわ このままじゃ今よりも
おかしくなっちゃいそうよ ああでも
あいつの背中の刺青は 春の夜桜よパッと散りそうな
粋で鯔背で艶っぽい 思い出すたびにね 気を失いそう
夢から覚めたら夢で
夢見てたらその夢で
夢見てる夢の夢ばかり
醒めないアタシは今日も
コワい夢やアマい夢を見るの
恋が終わっても恋を
恋が始まると恋を
いつまでたっても恋ばかり
やめないアタシはさっき
スゴい現実をヤバい現実を見たの
おかしいわ どうでもいいあんな奴
酔っぱらってキスしてやった だけなのに
恐いわあたしのカルマが あんな奴
求めてたとしたら ねえねえ
クリスマスクリスマスお釈迦様 あなた今夜はね?お暇でしょ?
こんなあたしの愚かさを 蓮の葉の上で お説教して
困ったわ いつまでも止まらない
苦しみが ガソリンの雨が降るみたい
ムカツクわアタシの無意識が
こんなことさせてたなんてウソでしょ ねえねえ
先生先生ジグムンド あなた博士でしょ?心理学の?
あたしの胸の夜桜を 二度と散らせずに忘れさせて
クリスマスクリスマスお釈迦様 あなた今夜はね?お暇でしょ?
悲しき乙女世界中のアタシ達をみんな叱ってほしいの
2009年12月22日火曜日
拝啓ミス・インターナショナル / SPANK HAPPY
ねえミス・インターナショナルおてがみかくのははじめてなの
わたしはあなたのファンです 今も手が震えているの
ねえミス・インターナショナルあなたのクラウン被りたいの
もしもよかったら一度だけ絶対に返しますから
あなたはテレビの前に座っているあたしたち現代の少女達の
言うならば英雄で しかも最後の神だと言えるでしょう
世界中継の夜にはお化粧をして着飾ってテレパシーを送るわ
I PRAY EVERY DREAMING
毎朝 神様に祈るの
友達になれますように
I PRAY CANDY FORTUNE
レディになりたいな
I SING FOR YOUR BEAUTY
I SING FOR MY BEAUTY
世界はまだ醜いわ
ねえミス・インターナショナルあなたの彼氏はどんな子なの?
あなたと変わらないぐらい奇麗な男の子なんでしょ?
あのねミス・インターナショナルあたしは彼氏が欲しくないの
あたしの町には奇麗な男の子なんていないんだもん
世間じゃ愛されすぎる危険なんて馬鹿げた事までを
女の子が気にしなくちゃ成らない。そんな憎むべき犯罪もあるわ
ナイフも花束に変える あなたの偉大なるビユーティーを世界に
I PRAY EVERY STARS
お星様見ながら祈るの
美しく成れますように
I PRAY SUGAR PUZLLE
学校が始まるわ
I HAVE TO GO TO SCHOOL
I HAVE TO BE STUDY
それじゃまたね キスします
I LOVE YOU
ミス・インターナショナル
2009年9月25日金曜日
砂渡し爺 / 板尾創路
白い着物がよく似合う
大きな瞳に僕は狂う
人は砂かけと言うけれど
僕はそうは思わない
いつも隣にいるよ
君に砂を渡し続ける
それが僕の幸せ
砂渡し 砂渡し
砂渡し爺
渡し続けるだけ
もらう事はない
狂った世界がよく似合う
かすれた声に僕は酔う
人はババアと言うけれど
僕はそうは思わない
いつも隣にいるよ
君に砂を渡し続ける
それが僕の生きざま
砂渡し 砂渡し
砂渡し爺
渡し続けるだけ
もらう事はない
もらう事はない
2009年8月29日土曜日
生きてることが辛いなら / 御徒町凧
生きてることが辛いなら
いっそ小さく死ねばいい
恋人と親は悲しむが
三日と経てば元通り
気が付きゃみんな年取って
同じとこに行くのだから
生きてることが辛いなら
わめき散らして泣けばいい
その内夜は明けちゃって
疲れて眠りに就くだろう
夜に泣くのは赤ん坊
だけって決まりはないんだし
生きてることが辛いなら
悲しみをとくと見るがいい
悲しみはいつか一片の
お花みたいに咲くという
そっと伸ばした両の手で
摘み取るんじゃなく守るといい
何にもないとこから
何にもないとこへと
何にもなかったかのように
巡る生命だから
生きてることが辛いなら
嫌になるまで生きるがいい
歴史は小さなブランコで
宇宙は小さな水飲み場
生きてることが辛いなら
くたばる喜びとっておけ
2009年6月27日土曜日
ROCKET / G.RINA
僕はかつてロケットに乗ることを夢見ていた
輝く宇宙に向かって!
大量の燃料を使って、友達や家族を見下ろして、
僕は夢をかなえる旅にでた
しばらくすると、燃料はすぐに燃え尽きた
そして僕のまわりには誰もいない
真っ暗な果てしない空洞の中
僕はこれといった答も見つけることができずに、孤独だった
憧れってこんなものだったっけ
僕は目を閉じて
川べりで君と夜空を見上げていた頃を想い出す
ようやく僕にとって、豪華なロケットは
必要でなくなったのかもしれない
いつか僕は最もまばゆいものを心のなかで見つけるだろう
Once I fancied myself riding on a rocket.
to the shining universe !
Using a lot of fuel, looking down on my friends and family,
I took a trip to fulfill my dream.
after a while, fuel burned out quickly
and nobody was around me.
Inside of a pitch-black endless hole.
I found no special answer and I was alone.
I couldn't recall what I was yearning.
I closed my eyes, and remembered the time
I looked up at the night sky with you on a riverbank.
I found out that a gorgeous rocket might be
unnecessary for me any longer.
Someday I will find the most dazzling thing inside my soul.
2009年6月26日金曜日
サーカスの娘 / G.RINA
空中ブランコの快楽 足下の世界を蹴っ飛ばす
だけど、この手を放して跳べばもう
生命ごと彼のもの 生命ごと彼のもの
その手を放さないで しっかり握ってね
いつぞ流した涙も 来たる何かを信じる為と
費やしてしまうのが美しい、
コインとして数えて コインとして数えて
惜しみなく使い果たせ 惜しみなく使い果たせ
明日死んでしまうかもしれないわ
それなら今日という日に賭けては
いけない命があるものかしら
そうよ、サーカスの娘
明日死んでしまうかもしれないわ
それでは今宵 此の場で踊れば
報われぬ、とつぶやく間もないわ
サーカスだけで見る夢
ナイフ使いの標的 愛しむべきそのしなる手首
縛られた体こそは正直
ええ、望むところよ ええ、望むところよ
怖れるものはないの 恥じるものもないの
いつぞ流した涙も 来たる誰かを信じる為と
費やしてしまうのが美しい、
コインとして数えて コインとして数えて
惜しみなく前へ進め 惜しみなく前へ進め
明日死んでしまうかもしれないわ
それなら今日という日に賭けては
いけない命があるものかしら
そうよ、サーカスの娘
明日死んでしまうかもしれないわ
それでは誰かの為に踊れば
救われる憧れもあるかしら
サーカスだけで見る夢
2009年6月24日水曜日
ジャンニ・ヴェルサーチ暗殺 / SPANK HAPPY
この退屈な国には もうお金がないわ
街が絶滅しそうね あなた最後の望みよジャンニ
ホスト通いの友達や ゲイのみなさんだけじゃなく
アタシも愛しているのよ 震えるほどの気品よジャン・ポール
昼の恋は 恋はあなたと
夜の愛も 愛も
裸になっても 心は
Je t'aime, je t'aime, ...
あなたを着てるの
この退屈な男は もうお金がないわ
優しいだけじゃダメだわ あなたを買いに行かなきゃカルヴァン
でもこの人が好きなの 悪いのはアタシだわ
アタシ生まれ変わったら 絶対貴族になるのクリスチャン
クリスチャン・D
20年前アタシ産まれた頃のお話をして ねぇダーリン
アタシあなたの話とっても大好き お金で虹が架かる空
夜の東京タワー2人でのぼり いつか見れるの?もう一度?
あのねどうして今は景気が悪いの?
資本主義はきっと 恋愛よりも難しいのね
それでもあたし あなたのキッスで結局
Je t'aime, je t'aime, ...
でもお金がないの
この最高な街には 今お金はないけど
あなたを愛する人々は こんなに沢山いるわジャンニ
あなたが撃たれたその日に ニュースであなたを見たけど
美し過ぎる瞳だわ あれじゃ殺されちゃうわねジャンニ
ご冥福を祈るけど 何も心配ないわ
あなたの気品と精神は アタシたちが受け継いでくわ
ずっとオシャレでいたいわ 我が命果てるまで
いまアタシが着てるのは ママから譲り受けたディオール
今夜は星が綺麗だわ 赤坂の夜はシンパシック
いつかアタシが死んだら 天国で会いましょうねジャンニ
2009年6月14日日曜日
花 / ASA-CHANG & 巡礼
花が咲いたよ
酷く風に怯えた
誰も見たことない花が咲いていたよ
花など無い
それはあるはずもないと思ってたら
そしたら 花が咲いたよ
誰も見たことない 見えるはずもない 咲くはずもない花が咲いてたし
そこにやはり そこに確かに そこにあるだろう
花が咲いたよ
酷く風に怯えた
誰も見たことない花が咲いていたよ
そしたら 酷く風に怯えた
誰も見たことないそれは
花は風に怯えて 風に震えて 花は揺らされて
怯えていたようだ
花が泣いたよ
酷く風に打たれた
光を見たことない花が泣いていたよ
さっきの風の音よりもっと嵐で
そしたら 花が泣いていたよ
夢などない もう風などない もう雲も動かねど
なのにそれなのに花は 闇に愛して 闇に歌い 闇に泣き
なのにそれなのに花は 闇に飾られて 選ばれて 愛されて
光を見たことない花は 選ばれ愛され 闇を愛していたようだ
花よ
花の不屈の心に光が笑ってくれるように
引かれぬように 揺らされぬように 流されぬように 生きられるように
花よ 月を見よ 星は駄目よ闇よ
月は本当の光よ
今 星も綺麗よ
月の光のようなものが
本当の星の光のような闇が 駄目よ闇は
月は本当の光よ
ならばそれならば
闇の波を押し返すのだ 闇の住みかを紐解くのだ
花に光を
それを願ったんだ
そしてそしたら
花は答えたんだ
一度だけ答えたんだ
「光は要らね 水を下さい」
2009年6月3日水曜日
官能小説家 / 高橋源一郎
夏子は眠りと覚醒の狭間をゆっくりと渡ろうとしていた。それから不意にたぎるような哀しみがやって来た。きりきりと痛むような、けれども定かではない記憶が、遥か下の方で蠢いていた。ああ。夏子は声にならぬ声をあげた。イヤ。夏子は叫ぼうとした。なにかが夏子を連れ去ろうとしていた。どうすれば人の声の聞こえない物の音のしない静かなところに行けるだろうつまらないくだらない面白くない情けない哀しい心細いこうやってあたしは生きてゆくのかこんなにも寂しいのに。その時、夏子の耳にか細い声の歌が聞こえた。渡るにゃ怖し渡らねば。それは夏子自身が歌う声だった。
そうだ。あたしは渡らなければならないのだ。そう決めたのだ。するだけのことはしよう。あたしはなんのために生まれてきたのか、なにができるのか、それを知りたい。そう思ったのだ。暖かいところでまどろみ、無心に生きることがどれほど心やすらぐことであっても、そこから身を離そう。苦しいのはあたしだけじゃない。そう思った。誰かがいってた。なんのためにと問うてはいけないのだ。
その時、凍えるような寒さが躯の芯からやって来た。またここに戻ってきてしまった。夏子はそう思った。そこはシーツの中ではなかった。水に濡れた冷たいタイルの床に座りこみ、それよりさらに冷たい便座を抱きかかえるようにして、夏子は少しずつ目を覚ましていった。頭は重く、何度も繰り返し吐いたせいで喉が痛かった。
書かなくちゃ。いま、夏子が考えることができるのはそれだけだった。ほんの少し書くことを覚えただけなのにもうこんなに苦しかった。苦しいよ、苦しいよ。夏子は、桃水に何度も訴えた。すると、桃水は、それは君が正しい道を進んでいる証拠なのだと答えるのだった。書くことは苦しい、書くことは異常だ、誰もなにも書かなくても生きていける、なのに君は書こうとしている、君は狂いかけている、だったらもっと狂うのだ、もっともっと狂ってついに書くことが苦痛でなくなるまで。