2006年9月14日木曜日

Both Sides Now / joni Mitchell



幾重にもなって風に流れる天使の髪の毛
空に浮かぶアイスクリームのお城
いたるところに羽の谷間
そんな風に私は雲を見て来た

だけど今や雲は太陽を遮るだけの存在
そしてあらゆる人の上に雨や雪を降らせる
本当にいろんなことが私にはできたかもしれないのに
雲が私の邪魔をした

私は両方から雲を見て来た
上からも下からも、それなのにどういうわけか
私に思い出せるのは雲のまぼろしだけ
雲がどんなものか私にはいまだにはっきりとは判らない

お月さまに6月
それにフェリスの大観覧車
踊りまくって目眩めく感じ
そしておとぎ話がすべて現実になって行く
そんな風に私は恋を見て来た

でも今気がついてみればまるで違うその姿
去り行くあなたは笑い者にされるだけ
たとえあなたが気にかけていたとしても
そんな素振りを見せてはいけない
自分の本心をさらけ出したりしちゃだめ

私は両方から恋を見て来た
与えたり奪ったり、それなのにどういうわけか
私に思い出せるのは恋のまぼろしだけ
恋がどんなものか私にはいまだにはっきりとは判らない

涙と恐れ、そして誇らしげな気持ち
大声ではっきりと”あなたを愛しています”ということ
いくつもの夢と企み そしてサーカスの人込み
そんな風に私は人生を見て来た

だけど今かつての友だちはよく判らない振るまい
彼らは頭を横に振って、私は変わってしまったと言う
失われたものもあるけど得たものだってある
日々生きて行く中で

私は両方から人生を見て来た
勝ったり負けたり、それなのにどういうわけか
私に思い出せるのは人生のまぼろしだけ
人生がどんなものか私にはいまだにはっきりとは判らない




Bows and flows of angel hair
And ice cream castles in the air
And feather canyons everywhere
I've looked at cloud that way

But now they only block the sun
They rain and snow on everyone
So many things i would have done
But clouds got in my way

I've looked at clouds from both sides now
From up and down, and still somehow
It's cloud illusions i recall.
I really don't know clouds at all

Moons and junes and ferris wheels
The dizzy dancing way you feel
As every fairy tale comes real
I've looked at love that way

But now it's just another show
You leave 'em laughing when you go
And if you care, don't let them know
Don't give yourself away

I've looked at love from both sides now
From give and take, and still somehow
It's love's illusions i recall
I really don't know love at all

Tears and fears and feeling proud
To say "i love you" right out loud
Dreams and schemes and circus crowds
I've looked at life that way

Oh but now old friends are acting strange
And they shake their heads
and they tell me that I've changed
Something's lost but something's gained
In living every day

I've looked at life from both sides now
From win and lose, and still somehow
It's life's illusions i recall
I really don't know life at all




2006年9月4日月曜日

悲劇週間 / 矢作俊彦



その夜、ぼくはノートを広げて待った。ぼくの詩がどこからか蝶の群れのように降ってくるのを。いくら大陸を渡る蝶だって、いずれは羽を休めに降りてくるはずだ。

詩にできれば、ぼくの心はすっかり軽くなるはずであった。ぼくはそういう男なのだ。

ぼくのお国は詩の中にある。それなら渡り鳥と同じ、国境などどこにあろう。

ノートは一行も埋まらなかったが、ぼくは失望などしていない。このことを書く言葉が、まだないというだけだ、このぼくの中に。いずれ満たされるだろう、あの夜のように。

今はないその言葉に、きっとぼくの祖国はあるのだ。パンチョ・ビリャの腰の物のように。うそぶくな黒い拳銃。ああ、俺はひとりになってやる。

偽るな我が旅路を。俺には行く手がある。