2005年6月30日木曜日

Late Frangment / Raymond Carver




And did you get what
you wanted from this life, even so ?
I did.

And what did you want ?
To call myself beloved, to feel myself
beloved on the earth.


2005年6月29日水曜日

入眠 / 谷川俊太郎



いつから世界はこんな組み立てになったのだろう
眠れぬままに聞く夜中の音が心の中で
不条理な音楽になる

言いたいことはないのに
起き出して紙に語を並べるのは
言葉を石ころのように転がしておきたいから

2005年6月28日火曜日

俺様の宝石さ / 浮谷東次郎



2月26日


 お姉ちゃまへ


いやはや、ずぶんほめてくれてありがとう。ビザの切りかえのこと、家の人はほめると思ったけど、僕自身はまだ物足りないんだ。まだ僕のベストではないから。


それよりも夕やみ迫るロックフェラーのRCAビルの前、高級な野外スケートリンクに一人のガニマタの下手くそな背の低い男が、腕をうんとまくり上げて、「ちくしょう、ロックフェラーなんか」と、たまらなくなる気持ちに押されて何度も何度も転びかけ、転び、また尻を出っ張らして立ち上がり、そこを出る時にはビッコをフラフラひかなくては歩けなくなるまで、休まず、うまく滑ろうと努力しながら、新しく、清いファイトを、勇を、ふるいたせた僕を理解し、認めてもらいたい。ーーーマドンナの宝石ならず。俺様の宝石さ。


『図々しい奴』の中で「誰かを怖いと思ったらヘソのことを考えろ。誰の腹の真中にも同じヘソがあるんだ」といっているが、そのとおりだね。もう僕には怖いものなんて何もない(ただ勉強があるだけさ)。ヘソのこと、己れの力、労働と信念、未来に誇りを持てば、怖いものなんてあるはずないよ。


NBC、タイムがNOといったら「未来の大人物を雇う名誉を逃したな」と思ってやるつもりでいます。うぬぼれじゃない。心理学的にだってこう思えば新しい考えが、希望が、勇気がふき上げてくるよ。ロックフェラーがコロンビア大学に土地を貸しているんじゃなくて、借りているんだということを知った時(センターの土地)滑稽な気がしたよ。ーーー僕の大野心は、大学を創設し、そのすべての経費をまかなうことなんだから、ーーーロックフェラーの比じゃない。 





2005年6月27日月曜日

Funeral Blues / W.H.Auden




Stop all the clocks, cut off the telephone,
Prevent the dog from barking with a juicy bone.
Silence the pianos and with muffled drum
Bring out the coffin, let the mourners come.

Let aeroplanes circle moaning overhead
Scribbling on the sky the message He is Dead,
Put crepe bows round the white necks of the public doves,
Let the traffic policemen wear black cotton gloves.

He was my North, my South, my East and West,
My working week and my Sunday rest,
My noon, my midnight, my talk, my song,
I thought that love would last forever: 'I was wrong'

The stars are not wanted now, put out every one;
Pack up the moon and dismantle the sun;
Pour away the ocean and sweep up the wood.
For nothing now can ever come to any good.

2005年6月26日日曜日

By This River / Brain Eno




here we are, stuck by this river
you and i underneath the sky
thats ever falling down, down, down
ever falling down

through the day, as if through an ocean
waiting here, always failing to remember
why we came, came, came
i wonder why we came

you talk to me, as if from a distance
and i reply with impressions chosen
from another time, time, time
from another time

2005年6月25日土曜日

ハナレバナレ / キセル



君が目を覚ます朝 僕は一人眠る頃
閉じたまぶたの裏側 赤と黄色のその中に 浮かんで消える

夏の太陽に照らされ 君は一人汗かいて
海の見える窓から 僕の街は見えますか?

僕らはきっと 変わらずにずっと
それぞれ暮らしてくので
たまには君を忘れてしまうよ
その内きっと本当にね
明日は雨が降るのかな

あかね色が広がって 影が長く伸びたなら
風が少し強くなった 明日の雨も気がかりで

僕らはずっと はなればなれ
色の違う空の下
雨の朝は君を想うよ
どこまで続くのかな
窓には青い空

僕らはきっと 変わらずきっと
たまには君を 忘れてしまうよ
本当にね




2005年6月24日金曜日

百三歳になったアトム / 谷川俊太郎



人里離れた湖の岸辺でアトムは夕日を見ている
百三歳になったが顔は生まれたときのままだ
鴉の群れがねぐらへ帰って行く

もう何度自分に問いかけたことだろう
ぼくには魂ってものがあるんだろうか
人並み以上の知性があるとしても
寅さんにだって負けないくらいの情があるとしても

いつだったかピーターパンに会ったとき言われた
きみおちんちんないんだって?
それって魂みたいなもの?
と問い返したらピーターは大笑いしたっけ

どこからかあの懐かしい主題歌が響いてくる
夕日ってきれいだなあとアトムは思う
だが気持ちはそれ以上どこへも行かない

ちょっとしたプログラムのバグなんだ多分
そう考えてアトムは両足のロケットを噴射して
夕日のかなたへ飛び立って行く

2005年6月23日木曜日

帰途 / 田村隆一



言葉なんかおぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きてたら
どんなによかったか

あなたが美しい言葉に復讐されても
そいつは ぼくとは無関係だ
きみが静かな意味に血を流したところで
そいつも無関係だ

あなたのやさしい眼のなかにある涙
きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦
ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら
ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう

あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか
きみの一滴の血に この世界の夕暮れの
ふるえるような夕焼けのひびきがあるか

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる

2005年6月22日水曜日

La Bulle de Savon / Jean Cocteau



シャボン玉の中へは
庭は這入れません
まはりをくるくる廻っています

Dans la bulle de savon
le jardin n'entre pas.
Il glisse
autour.





2005年6月20日月曜日

He Wishes For The Clothes of Heaven / W.B.Yeats


もし私に刺繍した天の衣があれば、
金と銀の光で織った、
夜と昼とたそがれの、
青い、ほのかな、夜いろの衣をもっていたら、
あなたの足もとにそれを広げるでしょう。
けれど貧しい私には夢しかありません。
私はあなたの足もとに、私の夢を広げました。
そっと踏んでくださいね、私の夢を踏むのですから。

Had I the heavens' embroidered cloths,
Enwrought with golden and silver light,
The blue and the dim and the dark cloths
Of night and light and the halflight,
I would spread the cloths under your feet:
But I, being poor, have only my dreams;
I have spread my dreams under your feet;
Tread softly because you tread on my dreams.