2005年7月4日月曜日

Definitions / Alain



愛 AMOUR




この言葉は一つの情念と同時に、一つの感情を示している。愛の始まりは、そして愛を感じるたびに、それはいつも、一種の歓喜である。しかも一人の人間が今いることと、あるいはその追憶と深くかかわっている歓喜である。人はこの歓喜に、不安を感じることがある。いつもちょっと感じている。なぜなら、この歓喜は他者に依存しているから。少し考えただけでもあの恐怖、一人の人間がその思いのままにわれわれを、幸福でいっぱいにすることができ、われわれからすべての幸福を取り上げることができることから起こってくる恐怖が、増大する。そこから、われわれは愚かにも、今度はこの人間に対して権力を揮おうとするようになる。彼が彼自身の側で感じている情念の運動は、必然的に、相手の状況をいっそう不確実なものにしてしまう。しるしの交換は、ついに一種の狂気にいたる。そこに含まれるのは、憎しみであり、この憎しみの後悔、愛の後悔、要するに無数の常軌を逸した思考と行動である。結婚と子供とが、この興奮状態を終わらせる。いずれにせよ愛する勇気は、忠実であろうと、すなわち、疑いのなかでも好意的に判断し、愛する対象のなかに新しい美点を発見し、自分自身をこの対象にふさわしくしようと多少とも明白に誓うことによって、われわれをこの哀れむべき情念の状態から引き出してくれるのである。この愛こそ真実の愛であって、それは人の知るように、肉体から魂へと高まり、否、魂を生み出し、それを愛自身の魔法によって不死のものにするのである。





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