2009年2月13日金曜日

イメージの詩 / 吉田拓郎



これこそはと信じれるものが
この世にあるだろうか
信じるものがあったとしても
信じないそぶり
悲しい涙を流している人は
きれいなものでしょうね
涙をこらえて笑っている人は
きれいなものでしょうね

男はどうして女を求めて
さまよっているんだろう
女はどうして男を求めて
着飾っているんだろう
いいかげんな奴らと口をあわせて
おれは歩いていたい
いいかげんな奴らも口をあわせて
おれと歩くだろう

たたかい続ける人の心を
誰もがわかってるなら
たたかい続ける人の心は
あんなには燃えないだろう
傷つけあうのが怖かった昔は
遠い過去のこと
人には人を傷つける力があったんだろう

吹き抜ける風のような
おれの住む世界へ
一度はおいでよ
荒れ果てた大地にちっぽけな花を一つ
咲かせておこう
おれもきっと君のいる太陽のあるところへ
行ってみるよ
そしてきっと言うだろう
来てみて良かった 君がいるから

長い長い坂を登って
後ろを見てごらん 誰もいないだろう
長い長い坂を下りて
後ろを見てごらん
皆が上で手を振るさ
きどったしぐさがしたかったアンタ
鏡を見てごらん
きどったアンタが映ってるじゃないか
アンタは立派な人さ

激しい激しい恋をしているおれは
いったい誰のもの
自分じゃ言いたいのさ
君だけのおれだと 君だけのものだと
裏切りの恋のなかで
おれは一人もがいている
はじめからだますつもりでいたのかい
僕の恋人よ

古い船には新しい水夫が
乗り込んで行くだろう
古い船を今動かせるのは
古い水夫じゃないだろう
なぜなら古い船も新しい船のように
新しい海へ出る
古い水夫は知っているのさ
新しい海のこわさを

いったい
おれ達の魂のふるさとってのは
どこにあるんだろうか
自然に帰れっていうことは
どういうことなんだろうか
誰かが言ってたぜ
おれは人間として自然に生きてるんだと
自然に生きてるって
わかるなんて
何て不自然なんだろう

孤独をいつの間にか
淋しがり屋とかんちがいして
キザなセリフをならべたてる
そんな自分を見た
悲しい男と悲しい女の
いつものひとりごと
それでもいつかは
いつものように慰めあっている




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