2005年12月25日日曜日

The Christmas Song / Mel Thome



暖炉では栗の実が焼かれてる
ジャックフロストがあなたの鼻をつねる
聖歌隊はクリスマスキャロルを歌って、
みんなはエスキモーみたいに着飾っている。

みんなは知っている
七面鳥とクリスマスツリーがこの季節を鮮やかに彩るってこと
ちっちゃな子供たちの目は真っ赤に輝いて、
今夜は眠れそうにない。

だって子供たちは知っているから
サンタがたくさんのオモチャを肩からさげて
家に向かっているって
それに母親から生まれた子供たちはみんな
こっそり見ようとするから
トナカイが本当に空を飛ぶ方法を知ってるかってことを。

だから僕はこの短い言葉を贈ろうと思う
1歳から92歳の子供たちに
何度も何度も言われてきた言葉だけれど
あなたに、
メリークリスマス。


2005年11月1日火曜日

The Violin Player / Charles Bukowski



その男は二階の正面観覧席にいた
コーナーをはずれた
観衆が伸びをする
観覧席の端に。

男は小柄で
ピンク色で、禿で、肥っていて
六十代だった。

男はヴァイオリンを弾いていた
男は自分のヴァイオリンで古典音楽を
弾いていた
そして競馬ファンは男を無視した。

バンカー・エージェントが第一レースを勝った
そして男はヴァイオリンを弾いた。

キャン・フライが第三レースを勝った
そして男はヴァイオリン演奏をつづけた。

コーヒーを飲みに席を離れもどってくると
男はまだ演奏をしていた、そしてブーメランが第四レースを勝ったあとも
まだ演奏していた。

だれも男をとめなかった
だれもなにをしているのか男に尋ねなかった
だれも拍手しなかった。

ポーウィーが第五レースを勝ったあと
男は観覧席の上に落ち風と日の光のなかへ
消えていく音楽を
つづけた。

スターズ・アンド・ストライプスが第六レースを勝った
そして男はさらに演奏した

そしてストーンチ・ホープが第七レースで内側を進んで
勝った
そしてヴァイオリン弾きはせっせと弾きつづけた
そしてラッキー・マイクが第八レースを4−5で勝ったとき
男はまだ音楽を演奏していた。

ダンプティズ・ゴッデスが最終レースをとって
すっからかんで
観衆が自分の車へのだらだらした長い歩行を開始したあとも
ヴァイオリン弾きは観衆の背中に
音楽を送りつづけた
そしておれはそこにすわって耳を傾けた
おれたちはふたりともひとりぼっちでそこにすわっていた

男が演奏をやめたときおれは拍手した。
ヴァイオリン弾きは立ち上がり
顔をおれの方へ向けてお辞儀した。
それからヴァイオリンをケースに入れて
立ち上がると男は階段を下りていった。

おれは数分間男を行かせてから
立ち上がると
自分の車までのだらだらした長い歩行を始めた
だんだんと夕暮れになっていった。

2005年10月26日水曜日

な / 谷川俊太郎



10月26日午後11時42分、私はなと書く。なの意味するところは、1.日本語のなというひらがな文字。2.なという音によって指示可能な事、及び物の幻影及びそこからの連想の一切。すなわちなはなに始まり全世界に至る可能性が含まれている。3.私がなと書いた行為の記録。4.及びそれらのすべてに共通して内在している無意味。


10月26日午後11時45分、私は書いたなを消しゴムで消す。なのあとの空白の意味するところは、前述の4項の否定、及びその否定の不可能なる事。即ちなを書いた事並びに消した事を記述しなければ、それらは他人にとって存在せず従ってその行為は失われる。が、もし記述すれば既に私はなを如何なる行為によっても否定し得ない。


なはかくして存在してしまった。10月26日午後11時47分、私は私の生存の形式を裏切る事ができない。言語を越える事ができない。ただ一個のなによってすら。





2005年10月23日日曜日

竹 / 萩原朔太郎



光る地面に竹が生え、
青竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より繊毛が生え、
かすかにけぶる繊毛が生え、
かすかにふるえ。

かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まっしぐらに竹が生え、
凍れる節節りんりんと、
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。


2005年9月14日水曜日

La Mort / Vladimir Jankelevitch



生者は、死ぬ運命という条件でのみ生者だ。そして、生きていないものは死なないというのもたしかに真実だが、それは死なないものは生きていないからだ。岩は死なない。布製の花はけっしてしおれない。だが、また、布製の花あるいは一つの岩の永遠の生、そのような生は永遠の死だ。というのは、死ぬものしか生者ではないのだから。あるいは、ジャン・ヴァールが言うように、生きているものとは死ぬことのできるものだ。死ななくては、生は生きる価値がないことだろう。死のない生に呪いあれ。エピクテートスは言う。『死なないことは呪いだ』。恒久的持続、限りなく引き延ばされた実存は、ある点では呪いの最も典型的な形であろう。というのは、地獄で被造物は恒存的不眠と終わることない倦怠という刑罰に処されているのだから。地獄とは、死ぬことのできないことだ。そこで、われわれは有限性における充全性と非存在における永遠とのいずれかを選ばねばならない。

どちらがよいのだろう。庭に咲くはかない生花か、標本となった乾いた永遠の花か。




2005年9月10日土曜日

通夜の客 / 高橋源一郎



ぼくは弟と交代で母の亡骸の横で仮眠をとることにした。うつらうつらしていると呼び鈴が鳴った。慌てて玄関に出ていくと喪服を着た紳士がふたりいてこの度はご愁傷さまでぜひお線香の一本もとおっしゃった。よく見るとビング・クロスビーと森進一だ。いくら母がファンで一晩中CDラジカセでふたりの曲ばかり流しているといってこんな夢を見るとは。そうは思ったがせっかく来ていただいたのに追い返すには忍びない。ありがとうございます母も喜びますとさっそく柩のおいてある部屋に案内した。ふたりは蓋をとって代わる代わる母の顔を眺めるとなまんだぶなまんだぶと手を合わせセツコさん(母の名)あんた早く逝きすぎたよといった。もしかしたらこのふたりのどちらかがぼくのほんとうの父親ではないのか。そう思うと胸の奥がざわめき目まいがした。また呼び鈴が鳴ったので玄関へ行くと目を泣きはらした森雅之(?)とシャルル・ボワイエとジャン・マレー(たぶん)が喪服を着て立っていた。なるほど若いころ母は美男の俳優が好きだったんだな。ご苦労さまですといったところで突然涙が出そうになった。夢の中でのことだけれど。





2005年9月8日木曜日

一本道 / 友部正人



ふと後ろをふり返ると
そこには夕焼けがありました
本当に何年ぶりのこと
そこには夕焼けがありました
あれからどの位たったのか
あれからどの位たったのか

ひとつ足を踏み出すごとに
影は後ろに伸びていきます
悲しい毒ははるかな海を染め
今日も一日が終わろうとしています
しんせい一箱分の一日を
指でひねってごみ箱の中

僕は今、阿佐ヶ谷の駅に立ち
電車を待っているところ
何もなかった事にしましょうと
今日も日が暮れました

ああ 中央線よ空を飛んで
あの娘の胸に突き刺され

どこに行くのかこの一本道
西も東もわからない
行けども行けども見知らぬ街で
これが東京というものかしら

たずねてみても誰も答えちゃくれない
だから僕ももう聞かないよ

お銚子のすき間からのぞいてみると
そこには幸せがありました
幸せはホッペタを寄せあって
二人お酒をのんでました
その時月が話しかけます
もうすぐ夜が明けますよ




2005年8月20日土曜日

六十二のソネット / 谷川俊太郎



世界が私を愛してくれるので
(むごい仕方でまた時に
やさしい仕方で)
私はいつまでも孤りでいられる

私に始めてひとりのひとが与えられた時にも
私はただ世界の物音ばかりを聴いていた
私には単純な悲しみと喜びだけが明らかだ
私はいつも世界のものだから

空に樹にひとに
私は自らを投げかける
やがて世界の豊かさそのものとなるために

……私はひとを呼ぶ
すると世界がふり向く
そして私がいなくなる


2005年8月19日金曜日

無題 / 難波田史男



夕日が西の空に沈んでゆく
空が青から紫になって
そして黄色に染まって……
それはひとときも止どまらず
たえず変化してゆくその美
そしてまたたく間に消え去ってしまうその美しさ
滅びゆくものへの愛情
いや そんなことを言うのはもうよそう
死の意識は
誰でも抱いていることなのだから


2005年8月18日木曜日

終わりの季節 / 細野晴臣



とびらの影で 息を殺した 微かなことばは「サヨナラ」
6時発の貨物列車が 窓の彼方で ガタゴト
朝焼けが、燃えているので 窓から招き入れると
笑いながら、入り込んできて 暗い顔を赤く染める
それで、救われる キモチ

今頃は終わりの季節 つぶやく言葉は「サヨナラ」
6時起きのあのひとの顔が 窓の彼方で チラチラ
朝焼けが、燃えているので 窓から招き入れると
笑いながら、入り込んできて 暗い顔を赤く染める
それで、救われる キモチ

2005年7月12日火曜日

天使 / 田村隆一



ひとつの沈黙がうまれるのは
われわれの頭上で
天使が「時」をさえぎるからだ

二十時三十分青森発 北斗三等寝台車
せまいベッドで眼をひらいている沈黙は
どんな天使がおれの「時」をさえぎったのか

窓の外 石狩平野から
関東平野につづく闇のなかの
あの孤独な何千万の灯をあつめてみても
おれには
おれの天使の顔を見ることができない

2005年7月10日日曜日

Definitions / Alain



苦悩 Angoisse




息も止まるほどの極度の注意から出てくるもの。結果を意識すると、さらにひどくなる。苦悩を解決する方法は動物のように呼吸することである。苦悩はため息である。





2005年7月9日土曜日

Something In The Way / Nirvana


橋の下に仕掛けた罠には
大きな穴が空いている
罠にかかった動物は
みんなぼくのペットになる
ぼくは草を食べて生きている
天井からしたたり落ちる水を飲んで生きている
でも魚を食べるのはかまわない
魚には感情なんてないのだから

何かがひっかかる
何かがひっかかる
何かがひっかかる
何かがひっかかる
何かがひっかかる
何かがひっかかる

2005年7月8日金曜日

ねむれ巴里 / 金子光晴



すこし厚い敷蒲団ぐらいの高さしかないフランスのベッドに、からだすっぽりと埋もれて眠っているわれら同様のエトランジェたちに、僕としては、ただ眠れと言うより他のことばがない。パリは、よい夢をみるところではない。パリよ、眠れ、で、その眠りのなかに丸くなって犬ころのようにまたねむっていれば、それでいいのだ。





2005年7月7日木曜日

一億三千万人のための小説教室 / 高橋源一郎



「生徒のみなさんへ。

 天気がいいので、ちょっと散歩してきます。
 その間に、あなたの小説を書いておいてください。
 書き終えたら、机の上に置いて、そのまま、家に帰ってもかまいません。詳しい感想は、あとで、手紙で送ります。

 プレゼントを一つ。
 最初の行をどう書いていいか、わからなかったら、こういうのはどうでしょう。

 「ハッピー・バースデイ」僕の父がいった。
 彼は外套のポケットから一冊の本を取り出して僕に渡した。

 その出だしは、この前、読んだって?

 いいではありませんか。書きはじめる時には、だれだって肩に力が入るのです。だったら、そこだけ、他人の力を借りても。書き終わってから、感謝をこめて、借りた出だしを直して、返せば、なんの問題もありません。

 早く読んでみたいな、あなたたちの小説を。」

2005年7月5日火曜日

Mexicans Begin Jogging / Gary Soto



工場で、ぼくは働いていた
ゴムの破片にまみれ、黄色い炎をあげる
釜戸の熱に身をかがめながら。
するとワゴン車から国境警備隊が飛び出してきた。
工場長は腕を振って「逃げろ」とぼくたちに合図、
「ソト、フェンスをよじ登るんだ」とどなるので
アメリカ市民ですよ、ってぼくは大声で言い返す。
「バカヤロ!冗談言ってるときかぁ」と言って、
ぼくの手に一ドル札を握らせて、
裏口へ急きたてた。

上司の命令ではしょうがない、ぼくは走り出し
逃げるメキシコ人たちの最後尾でおとりになったーーー
道ばたに驚いた通行人たちがズラリと並んでいたっけ
人垣がピンボケ写真のように遠ざかり、雨が降り出した。
工場街をぬけて、閑静な
住宅街へ出ると、急変した秋の空模様に顔色を失った面々。
ぼくはベースボールとかミルクセーキとか社会学者に向かって、「万歳!」と叫ばずにはいられなかった。
だって彼らがタイムカードでぼくを測定してるあいだに、
こっちは来世紀に向けてジョギングをはじめたのだから、
何か、とてつもなくアホっぽい笑みを顔に浮かべて、ね。

2005年7月4日月曜日

Definitions / Alain



愛 AMOUR




この言葉は一つの情念と同時に、一つの感情を示している。愛の始まりは、そして愛を感じるたびに、それはいつも、一種の歓喜である。しかも一人の人間が今いることと、あるいはその追憶と深くかかわっている歓喜である。人はこの歓喜に、不安を感じることがある。いつもちょっと感じている。なぜなら、この歓喜は他者に依存しているから。少し考えただけでもあの恐怖、一人の人間がその思いのままにわれわれを、幸福でいっぱいにすることができ、われわれからすべての幸福を取り上げることができることから起こってくる恐怖が、増大する。そこから、われわれは愚かにも、今度はこの人間に対して権力を揮おうとするようになる。彼が彼自身の側で感じている情念の運動は、必然的に、相手の状況をいっそう不確実なものにしてしまう。しるしの交換は、ついに一種の狂気にいたる。そこに含まれるのは、憎しみであり、この憎しみの後悔、愛の後悔、要するに無数の常軌を逸した思考と行動である。結婚と子供とが、この興奮状態を終わらせる。いずれにせよ愛する勇気は、忠実であろうと、すなわち、疑いのなかでも好意的に判断し、愛する対象のなかに新しい美点を発見し、自分自身をこの対象にふさわしくしようと多少とも明白に誓うことによって、われわれをこの哀れむべき情念の状態から引き出してくれるのである。この愛こそ真実の愛であって、それは人の知るように、肉体から魂へと高まり、否、魂を生み出し、それを愛自身の魔法によって不死のものにするのである。





2005年7月2日土曜日

Terre des hommes / Antoine de Saint-Exupery



ぼくは、アルゼンチンにおける自分の最初の夜間飛行の晩の景観を、いま目の当たりに見る心地がする。それは、星かげのように、平野のそこそこに、ともしびばかりが輝く暗夜だった。


あのともしびの一つ一つは、見わたすかぎり一面闇の大海原の中にも、なお人間の心という奇蹟が存在することを示していた。あの一軒では、読書したり、思索したり、打明け話をしたり、この一軒では、空間の計測を試みたり、アンドロメダの星雲に関する計算に没頭しているかもしれなかった。またかしこの家で、人は愛しているかもしれなかった。それぞれの糧を求めて、それらのともしびは、山野のあいだに、ぽつりぽつりと光っていた。中には、詩人の、教師の、大工さんのともしびと思しい、いともつつましやかなものも認められた。しかしまた他方、これら生きた星々のあいだにまじって、閉ざされた窓々、消えた星々、眠る人々がなんとおびただしく存在することだろう……。


努めなければならないのは、自分を完成することだ。試みなければならないのは、山野のあいだに、ぽつりぽつりと光っているあのともしびたちと、心を通じあうことだ。





2005年7月1日金曜日

Woman, Native, Other / Trinh T. Minh-ha



<わたし>は信じさせられていた
書く人は、踊っているのだと
けれども踊る人は(書くときのように)
書いたりしない
書く人も(踊るようには)
踊りはしない
書いているあいだは、前屈みに
前屈みになって、精を出し
背中を丸めて、座り込み
背筋を伸ばして立つことも
仰向けになって寝ることもない
書いているあいだも、歩いたり
スキップしたり、走ったり
物を食べたり
する振りして
自由に飛べると思っていても
それはただ、
行/線を行/線と思わず
柵を柵と見ることなく
監獄の庭に気付かずに
鳥籠のなかにいる自由にすぎない

2005年6月30日木曜日

Late Frangment / Raymond Carver




And did you get what
you wanted from this life, even so ?
I did.

And what did you want ?
To call myself beloved, to feel myself
beloved on the earth.


2005年6月29日水曜日

入眠 / 谷川俊太郎



いつから世界はこんな組み立てになったのだろう
眠れぬままに聞く夜中の音が心の中で
不条理な音楽になる

言いたいことはないのに
起き出して紙に語を並べるのは
言葉を石ころのように転がしておきたいから

2005年6月28日火曜日

俺様の宝石さ / 浮谷東次郎



2月26日


 お姉ちゃまへ


いやはや、ずぶんほめてくれてありがとう。ビザの切りかえのこと、家の人はほめると思ったけど、僕自身はまだ物足りないんだ。まだ僕のベストではないから。


それよりも夕やみ迫るロックフェラーのRCAビルの前、高級な野外スケートリンクに一人のガニマタの下手くそな背の低い男が、腕をうんとまくり上げて、「ちくしょう、ロックフェラーなんか」と、たまらなくなる気持ちに押されて何度も何度も転びかけ、転び、また尻を出っ張らして立ち上がり、そこを出る時にはビッコをフラフラひかなくては歩けなくなるまで、休まず、うまく滑ろうと努力しながら、新しく、清いファイトを、勇を、ふるいたせた僕を理解し、認めてもらいたい。ーーーマドンナの宝石ならず。俺様の宝石さ。


『図々しい奴』の中で「誰かを怖いと思ったらヘソのことを考えろ。誰の腹の真中にも同じヘソがあるんだ」といっているが、そのとおりだね。もう僕には怖いものなんて何もない(ただ勉強があるだけさ)。ヘソのこと、己れの力、労働と信念、未来に誇りを持てば、怖いものなんてあるはずないよ。


NBC、タイムがNOといったら「未来の大人物を雇う名誉を逃したな」と思ってやるつもりでいます。うぬぼれじゃない。心理学的にだってこう思えば新しい考えが、希望が、勇気がふき上げてくるよ。ロックフェラーがコロンビア大学に土地を貸しているんじゃなくて、借りているんだということを知った時(センターの土地)滑稽な気がしたよ。ーーー僕の大野心は、大学を創設し、そのすべての経費をまかなうことなんだから、ーーーロックフェラーの比じゃない。 





2005年6月27日月曜日

Funeral Blues / W.H.Auden




Stop all the clocks, cut off the telephone,
Prevent the dog from barking with a juicy bone.
Silence the pianos and with muffled drum
Bring out the coffin, let the mourners come.

Let aeroplanes circle moaning overhead
Scribbling on the sky the message He is Dead,
Put crepe bows round the white necks of the public doves,
Let the traffic policemen wear black cotton gloves.

He was my North, my South, my East and West,
My working week and my Sunday rest,
My noon, my midnight, my talk, my song,
I thought that love would last forever: 'I was wrong'

The stars are not wanted now, put out every one;
Pack up the moon and dismantle the sun;
Pour away the ocean and sweep up the wood.
For nothing now can ever come to any good.

2005年6月26日日曜日

By This River / Brain Eno




here we are, stuck by this river
you and i underneath the sky
thats ever falling down, down, down
ever falling down

through the day, as if through an ocean
waiting here, always failing to remember
why we came, came, came
i wonder why we came

you talk to me, as if from a distance
and i reply with impressions chosen
from another time, time, time
from another time

2005年6月25日土曜日

ハナレバナレ / キセル



君が目を覚ます朝 僕は一人眠る頃
閉じたまぶたの裏側 赤と黄色のその中に 浮かんで消える

夏の太陽に照らされ 君は一人汗かいて
海の見える窓から 僕の街は見えますか?

僕らはきっと 変わらずにずっと
それぞれ暮らしてくので
たまには君を忘れてしまうよ
その内きっと本当にね
明日は雨が降るのかな

あかね色が広がって 影が長く伸びたなら
風が少し強くなった 明日の雨も気がかりで

僕らはずっと はなればなれ
色の違う空の下
雨の朝は君を想うよ
どこまで続くのかな
窓には青い空

僕らはきっと 変わらずきっと
たまには君を 忘れてしまうよ
本当にね




2005年6月24日金曜日

百三歳になったアトム / 谷川俊太郎



人里離れた湖の岸辺でアトムは夕日を見ている
百三歳になったが顔は生まれたときのままだ
鴉の群れがねぐらへ帰って行く

もう何度自分に問いかけたことだろう
ぼくには魂ってものがあるんだろうか
人並み以上の知性があるとしても
寅さんにだって負けないくらいの情があるとしても

いつだったかピーターパンに会ったとき言われた
きみおちんちんないんだって?
それって魂みたいなもの?
と問い返したらピーターは大笑いしたっけ

どこからかあの懐かしい主題歌が響いてくる
夕日ってきれいだなあとアトムは思う
だが気持ちはそれ以上どこへも行かない

ちょっとしたプログラムのバグなんだ多分
そう考えてアトムは両足のロケットを噴射して
夕日のかなたへ飛び立って行く

2005年6月23日木曜日

帰途 / 田村隆一



言葉なんかおぼえるんじゃなかった
言葉のない世界
意味が意味にならない世界に生きてたら
どんなによかったか

あなたが美しい言葉に復讐されても
そいつは ぼくとは無関係だ
きみが静かな意味に血を流したところで
そいつも無関係だ

あなたのやさしい眼のなかにある涙
きみの沈黙の舌からおちてくる痛苦
ぼくたちの世界にもし言葉がなかったら
ぼくはただそれを眺めて立ち去るだろう

あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか
きみの一滴の血に この世界の夕暮れの
ふるえるような夕焼けのひびきがあるか

言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる

2005年6月22日水曜日

La Bulle de Savon / Jean Cocteau



シャボン玉の中へは
庭は這入れません
まはりをくるくる廻っています

Dans la bulle de savon
le jardin n'entre pas.
Il glisse
autour.





2005年6月20日月曜日

He Wishes For The Clothes of Heaven / W.B.Yeats


もし私に刺繍した天の衣があれば、
金と銀の光で織った、
夜と昼とたそがれの、
青い、ほのかな、夜いろの衣をもっていたら、
あなたの足もとにそれを広げるでしょう。
けれど貧しい私には夢しかありません。
私はあなたの足もとに、私の夢を広げました。
そっと踏んでくださいね、私の夢を踏むのですから。

Had I the heavens' embroidered cloths,
Enwrought with golden and silver light,
The blue and the dim and the dark cloths
Of night and light and the halflight,
I would spread the cloths under your feet:
But I, being poor, have only my dreams;
I have spread my dreams under your feet;
Tread softly because you tread on my dreams.